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日心館の心


井上館長が受け継ぐ「中心力の合気道」

合気道日心館の井上強一館長は、養神館合気道宗家・塩田剛三先生の直弟子として長く側に仕え、合気の極意をことごとくその身に吸収してきました。

相手の攻撃を無力化し、自在に翻弄する塩田先生の技は、神技と讃えられました。その真髄は、自分自身の心身を中心一点に集中し、そこから生み出す澄み切った力と技と気の流れの中に、相手を巻き込むのです。ひとことで言うなら、「中心力の合気道」。その根源はもちろん、植芝盛平開祖にさかのぼります。

中心力の養成を主眼とする養神館合気道の基本技は、養神館道場の第一期研修生であった井上館長が、当時の仲間と苦心の末に制定し、塩田先生の認可を得て、現在に至るまで受け継がれるものです。

その技法は武道としての実用性にも優れ、後に塩田先生の命を受けて警視庁に出向した井上館長は、危険な任務につく警察官のために、25年にわたり武術教官という立場で、実践即応の合気道を指導してきました。

警視庁退官後は、養神館本部道場長、さらには塩田先生の後を継ぐ第二代養神館館長に就任。塩田先生の教えと養神館合気道の伝統を、誰よりも深く追求してきた証がそこにあります。その間、井上館長は「抜きの合気」に代表される、相手の力を無力化してしまう極意技に磨きをかけていきました。

養神館館長退職後は、合気道親和館の名称で国内外に指導を行い、合気道界の相互交流と、技術の普及に専念。年齢を積み重ね、技の円熟味を増す中で、合気道こそ日本古来の心の美学を身体的・行動的に表現したものであるとの確信に至
り、その集大成として「合気道日心館」の名を掲げました。

日本人が古来、大切にしてきた、中心を乱さぬ不動にして澄み切った心技体、すなわち中心力こそ、植芝盛平開祖から塩田剛三先生が学び取り、そして井上強一館長へと受け継がれた、合気道の真髄です。



昭和40年9月、養神館に来館したアレクサンドラ英国王女を前に
塩田先生の剣の演武の受けを取る若き日の井上館長




相手の力を無力化する稽古の始まりは中心力の確立から



日心館合気道が育むやまとごころ

開祖植芝盛平翁は、「合気道は禊ぎの道である」とおっしゃいました。現代人は、よけいなこだわりをいっぱい抱え、大自然に満ちる気の生命力を忘れて、自分のエネルギーを消耗しながら生きています。人よりよけいにエネルギーを手に入れたい、人にはエネルギーを奪われたくないという思いが、絶えることのない争いを生み出します。

禊ぎとは、心身を浄化して大自然の気とつながり、豊かな生命力を取り戻そうとする、日本伝統の文化です。
禊ぎによって、ひとりひとりが生命の原点に立ち還り、豊かな気のエネルギーを取り戻すことで、
その気と気をお互いに通い合わせ、対立や争いを水に流し、調和に変えていこうというのが、日本人の知恵でした。

塩田剛三先生はその心を、「対すれば相和す」(剣術家鬼一法眼の言)という言葉で説明しました。
そして、次の名言を残します。「合気道最強の技とは、自分を殺しに来た相手と友達になることです」


こういった豊かな日本の精神性、すなわち「やまとごころ」を、現代に蘇らせたのが合気道です。



「構えの稽古で澄み切って立てることこそが禊ぎであり、中心力を確立する原点となる」



館長メッセージ

日心館の創立時に、井上館長が関係者に送った挨拶状の文章こそ、日心館が目指す合気道の心そのものです。その全文をここに掲載します。


拝啓 新緑の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

私儀、このたび四年間にわたって用いてまいりました合気道親和館の名称を一新し、新たに合気道日心館(にっしんかん)として心機一転、活動を展開していく運びとなりましたので、ご報告申し上げます。

私も一昨年に喜寿を過ぎ、自身の合気道修行の集大成に入る時期を迎えました。武道としての強い技をひたすら求め続
け、来年は合気道入門から早や60年を迎えようとしております。ふと気がつくと、強さを追い求めてきたはずなのに、いつの間にか自分自身が不自然な対立の気から解放され、稽古においても日常においても、無理のない自然体でいられるようになっていました。79歳にして心身に満ちる気の充実を、日々ありがたく感じております。これこそが、合気道からいただいた最大の財産であるような気がいたします。

恩師塩田剛三先生が「合気道は70歳を過ぎたら本当に楽しくなるぞ」と、おっしゃっていたことの意味はこれだったか
と、思い至ります。また開祖植芝盛平先生が「合気道とは禊ぎの技である」とおっしゃったお言葉にも、なんとなく共感できるようになりました。まさに合気道とは、塩田先生のおっしゃる「天地自然と一体になる道」であり、日本が生んだ世界に誇る武道文化ではないでしょうか。そしてこれこそ、日本人が古来、理想としてきた、太陽のような明るい生命力に満ち溢れた心である「やまとごころ(日本心)」の実践ではないかと思うのです。日本という国の名前もそこから来ています。

私は一人の日本人としての立場から、合気道を通じてこの「やまとごころ」を世界に伝えたいと強く願うようになりました。かつて「やまとだましい」という言葉が好戦的な意味で使われたこともありましたが、本来の「やまとごころ」に立ち返ることにより、自分自身が自然体となることを通じた平和と調和、そして本当の強さのありかたを問いかけたいのです。

そういった願いを込めて、このたび私は合気道日心館を立ち上げました。「日心」とは本来の「やまとごころ」の意味であり、また、合気道技法の要である不動の中心力を、太陽になぞらえた言葉でもあります。日心館の合気道は中心力の合気道です。中心が太陽のようにしっかりと安定して気を放つからこそ、無理のない自然体になれるわけです。

来年私は、満80歳の米寿を迎えるとともに、合気道修行60周年を迎えます。そのとき私自身が「やまとごころ」をもっと楽しんでいたいのです。そして合気道を通じた自然体の素晴らしさを世に問うことに、残された時間のすべてを捧げたいと、心から願います。

その心意気を、合気道日心館に託しました。ご賛同いただける皆様と共に手を取り合い、合気する喜びを分かち合って進んで行きたく、ここにご挨拶とともにますますのお力添えをお願い申し上げる次第です。
最後になりましたが、皆様の益々のご健康とお幸せをお祈り申し上げます。

敬具

合気道日心館館長
警視庁合気道名誉師範
合気道範士十段

井上強一